紹介ページ(知能情報学部学生向け)


新規配属生向け研究室紹介

研究分野

クラウドコンピューティングやエッジコンピューティングなど、ネットワーク上に分散配置された多数のコンピュータを効率的につかうための基盤ソフトウェアやプログラミング技術・アプリケーション開発について研究しています。エッジコンピューティングは、各地に配置されたエッジサーバを用いるための技術で、スマートフォンや各種センサー機器の情報を低遅延で処理・共有することで、高度交通システムなど新たなアプリケーションの実現が期待されています。

プログラミング

この研究室の活動は、ソフトウェア開発などプログラミングが主体となります。分散配置された計算機を効率的に使うには、データ配置などを考慮したプログラムを作る必要があります。一方で、複雑なプログラムを長年かけて作成するのも現実的ではないので、皆さんが効率的な分散ソフトウェアを簡単に作成できるような基盤ソフトウェア・プログラミング環境が望まれます。まずは3年次に先進的な技術に触れてもらい、4年次から皆さんの興味に応じて、基盤ソフトウェアやアプリケーションを研究開発していきましょう。

研究室情報

新しい研究分野ですし、詳しいことは研究室Webページや説明会にて紹介したいと思います。各地の情報を即座に利用して、どんな応用が可能か、皆さんの発想で新しいアプリケーション領域を広げていきましょう。一方で、実際のソフトウェアを実現する上で何が必要か、容易にプログラムを実現できるようにするにはどうすればいいか、一緒に考えていきましょう。説明会では去年の卒論生の研究内容なども紹介できると思います。技術トピックも多いので、大学院への進学を希望する人、大歓迎です。プログラミングにこだわりがある人も、大歓迎です。説明会のスケジュール情報などは、下記研究室WebページおよびDiscord チャンネルでアナウンス予定です。気軽に話を聞きに来てください。

Discord は、後期の情報通信ネットワークII(コース演習:クラウドシステム)でも利用予定なので、 興味がある人は入っておいても構わないかと。 実は「実験・演習」で鎌田のコースをとった人にはすでに参加してもらっていて、そこの「#研究室配属などの話題」ってチャンネルのことです。 初めて入る人は、まずは Discord にアカウントを作成してもらってから、 その状態で紙面配布した招待リンクにアクセスしてもらえばOKです。

説明会スケジュール

2024年の 6月下旬から7月上旬にかけて、研究室の説明会を開催します。 場所は 13 号館 3F の 313 号室(3F の東端)です。 部屋が空いていない場合は、向かいの 301 号室の呼び鈴を呼び出してください。

開催時間 (多分 鎌田のトークは20分ぐらい。そのあと希望があれば雑談。院生・卒論生がいる時間は、下記参照。要望があれば、Discordでの質問どうぞ。)

  • 水曜:11:00-, 12:30- (6/26, 7/3, 7/10, 卒論生も多分いるはず)
  • 木曜:12:30-, 13:00- (6/27, 7/4, 院生もいるはず)
  • 金曜:12:30-, 13:00- (6/28, 院生もいるはず)

配属希望および状況確認フォームについて

研究室希望者が超過した場合は、GPA やプログラミングスキルなどをもとに判断したいと思います。 あと、学生の皆さんの間で、事前に希望状況が分かった方が良かろうということで、希望フォームを配置しました。MS365 の甲南大学アカウントでログインした状態で回答可能で、後日の編集、集計状況(人数のみ)の確認も可能です。

このゼミを希望するかもっという人は、早めに回答しておいてください。後で希望が変わったって場合は変更登録してもらえると助かります(一応履歴は分かるみたい)。

入力&変更期限は、7/10 15:00 にしています。

あと、プログラミングスキルに関してアピール内容がある人は、フォームに記述しておいてください。希望超過時の加点材料に利用します。

卒論テーマなどの紹介

卒論テーマは、学生の皆さんからの持ち込みネタも大歓迎ですが、一方で、鎌田の方で研究ネタなども色々考えているので、そのあたりから自分の好きな/得意な/トライしたい分野を選んで、一緒にネタにくっていく形も多いです。できれば、外部の研究会などで発表できるような形に仕上げたいと思っていますし、院への進学も大歓迎です(2024年: 1名、2025: 1名予定)。

基本は、edge/fog computing とよばれる分野や、cloud computing の分野を対象としています。 ただ、基盤ソフトウェアやソフトウェア開発環境、ネットワーク技術、応用アプリケーションなど、広がり方も様々なので、3年の段階では色々好きな技術を触ってもらい(なんなら就活前に)、4年次就職活動など終わってから研究に集中してもらいます。 基本、卒論に専念してほしいので、単位は3年時点でしっかりとっておいてください。

2024年の卒論テーマはまだ確定していないですが(分野などは分かれている)、2023 年の卒論などを含めて、研究事例などを紹介しておきます。

エッジ環境向け分散データストア

データストアの基本機能自体はもう何年も前に出来ています(まだ公開できていませんが)。 狙っているのは、Cloud computing におけるスケーラブルデータストアのような存在を、 Edge computing 用の低遅延分散データストアとして提供するってところです(別の解説文)。 cloud ではスケーラビリティと対故障性が主要課題でしたが、低遅延データアクセスを可能にするため、データ配置および配信をしっかり管理できるようにしようってことに主眼をおいて研究をしています。

アプリケーション開発者は、自分の作成するアプリケーションのデータ構造と、エッジサーバへのマッピング方法を考えて、データの配置・キャッシュ手法をルールとして定義すれば、あとはシステムがデータ更新を自動で近傍サーバに配信してくれます。

例えば、こんな具合。

  • 各道路の情報を、どのエッジに配置するかは、データ構造内に指定する
    • 道路情報を変更したら、上記エッジサーバにも随時配信される。
  • 走行車両の情報は、現在いる道路の管理サーバに配置したい
    • そのようなルールをかけば、勝手に車両情報も随時配信してくれる

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分散データストアのセキュリティ拡張

クラウドに配置したデータも適切なアクセス保護をかけないといけないように、edge 環境でも適切なアクセス保護が必要です。

2023年の卒論では、Firebase が提供しているような宣言的な security rule の仕組みを我々の分散データストアにも追加し、エッジ向け ITS (高度交通システム)アプリケーションに適用してみました。 セキュリティルールの判定には、必要に応じて関連レコードへのアクセスが必要となりますが、我々のデータストアでは、データ配置を指定できるので、各サーバにセキュリティ判定に必要なデータを事前配置してやれば、アクセスチェックも即時できるよね(というか、そうしないとデータアクセスに複数サーバアクセスが必要になるよ)って研究です。2023年度卒論の内容を研究会で発表してきました。藤井君は現在修士に進学して、通信路の暗号化なども含めた研究を展開中です。

これとは別に、モバイル系のアプリケーション事例について、実際にセキュリティルールを記述する試みも卒論でおこないました。 例えば、「宅配便の荷物の配送の際に、受取人が許可したら、ドライバーがマンションの玄関にIDカードをかざすだけで、ロックが外れる」みたいな応用事例などを検討してました。

また、セキュリティ拡張ではないですが、クエリ機能の拡張や外部サービスとの連携について、2024年度進行中です。

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分散データストアのアプリケーション評価環境

いろいろ複雑な処理を頑張ってくれる分散データストア、ちゃんと性能がでるか確認したいですよね。 とはいえ、本当にエッジサーバ準備して、クライアント動かすのは大変です。

って訳で、一般のクラスタ環境上で、複数の仮想エッジサーバ(コンテナ)群に、サーバ間通信遅延を設定しながら動かして、性能評価をおこなえるようにするって研究をおこなっています。 当然、クライアントの動きもエミュレートしないといけないので、こちらはこちらで、ITS アプリ事例用のエミュレータを作成しています。 うちのエッジサーバを kubernetes や TC コマンド使いながら走らせるって訳です。

2023年度の卒論では、クライアントの配置が不均等で、それに応じてエッジサーバも不均等に配置されたような環境について、ちゃんと性能評価できるようになったよって研究をやっていました。例えば、このあたりだって 2 号線沿いや 43号線沿いは車多いけど、大学付近は車少ないでしょ。 サーバ間遅延とクライアントに関してそれぞれ卒論で研究して、二人の内容をまとめる形で研究会で発表しています。 あと、評価結果の視覚化についても別の卒論としておこなっていました。

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分散データストアとネットワーク

情報伝搬については、サーバから各クライアントに unicast 通信するのでもいいですが、broadcast/multicast ももっと使ってもいいんじゃないって思っています。大きいデータなど不都合もあるんですが、短いデータを即送りたいって状況なので。 ってわけで、2023年の卒論で UDP broadcast を用いた場合のネットワーク基礎性能の評価などもおこなっていました。このあたりの研究は、通信路の暗号化なども含めて、これから広げていきたい領域です。

地域情報利用アプリケーションの開発

せっかく地域情報を即時共有できる基盤が出来てきたので、使いましょうってことで、2023年度は1件アプリケーションの研究をおこなっていました。 作成したのは拡張現実アプリで、クラウドから人物の位置情報を与えておき、拡張カメラアプリをその方向にかざすと、その位置に「人アイコン」が現れるってアプリです。対象の人が「カメラに写っている」ならありがたくもないですが、壁の向こうにいても「見える」ってのがポイントで、将来的に運転補助などに使えればって狙いです。このアプリは Unity を用いて作成され、Android 端末で動作確認したものです。

2024年度も、画像認識系ツールとリンクしていろいろ面白いことができないかとか、情報共有基盤を介した他のクライアントとの協調で楽しいことができなかとか、あるいはそのためのライブラリ群を整備できないかとか検討中です。

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