各地に配置されたサーバ群を、「クラウド」のように手軽かつ安定的に利用する技術を開発し、低遅延な情報共有を活用したアプリケーションの開拓を進めています。
エッジコンピューティングとは
従来のクラウドコンピューティングでは,データを遠隔のデータセンターに集約して処理していました.一方,エッジコンピューティングでは,利用者の近くに配置された「エッジサーバ」を活用することで,低遅延・低通信コストな処理を実現します.5G モバイル通信技術における低遅延処理の実現手法としても注目を集めています.
エッジ環境向け分散データストア
エッジサーバや利用者(車両など)が、各種情報を低遅延で共有できる分散データストアを開発しています。車両などの情報を扱う際には、アクセス先のサーバが移動に応じて変化するだけでなく、移動先への情報伝達なども考慮する必要があります。本システムでは、アプリケーションの特性に応じて、低遅延・低コスト通信を実現するための柔軟なデータ配置ルールを組み込むことができます。
利用者の近くで計算するだけでなく,近くにいる人やモノの間で情報を即時共有できる「場」も提供します。
例えば、画像処理技術と連携することで、危険な状況を検知・分析し、自動で他の車両に知らせるといった利用法を考えています。
技術トピック・社会貢献
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セキュリティ機構: 対象データに対するアクセス保護機構を提供します。また、移動体を対象として、セキュアかつ低遅延な通信技術も研究開発中です。
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応用事例:高度交通システムへの実応用などを視野に、画像処理技術との低遅延連携に向けた技術開発と応用事例の開拓を進めています。
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大規模運用にむけて:本システムを利用したアプリケーションの低遅延性を検証できるよう、クラスタ環境上での実験評価環境などを整備しています。
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社会貢献:開発された基盤ソフトウェアは、オープンソースとして公開予定です。
技術背景の解説
Edge 環境では、Edge Server で各種サービスを実行することで、低遅延アプリケーションを実現しようという研究がさまざま進められています。
計算基盤としては、MEC に代表されるような Edge Server においてアプリケーションを起動するための仕組みが提供されつつあります。 いわゆるクラウドコンピューティングにおける IaaS みたいなものですね。
一方で、データの管理方法については、まだ研究すべき点がさまざまです。 クラウドコンピューティングでは、スケーラブルなデータストア・データベースシステムが、IaaS 仮想マシに対してデータ提供をおこなうのが一般的でした。 データセンター内では、それで問題ないのでしょうが、仮想マシンが各地の edge server に展開しているのでは、そうもいきません。 加えて、edge server 上で遅延制約の厳しいアプリケーションを動かしたいなら、「なかったらクラウドに取りに行こう」では済まないかもしれません。
明示的データキャッシュ指示が可能なエッジ環境向け分散データストア
我々の研究グループでは、開発者が準備した指示にしたがって関連 edge server にデータキャッシュすることができる分散データストアを開発しています。 開発者がアプリケーションに応じたルールを記述することで、システムが各レコードの状態変化を監視し、必要に応じて関連 edge server にデータをキャッシュしてくれます。
エッジ関係の論文などは、
- 鎌田のpublicationのページ (eng, 日本語)
- 2023年以降のエッジ関係論文
を見てください。